トラブルにならないための〜法律の相続対策
トラブルにならないための〜法律の相続対策
文書作成日:2019/04/20


 今回は相談事例を通じて、自筆証書遺言の有効性について、ご紹介します。



 父が自筆の遺言を遺して亡くなりました。内容は、自宅の土地は私にくれるというものでした。きちんとした人でしたので、本などを参考にして書いたのでしょう、すべて手書きで書かれていましたし、日付、署名、押印もありました。
 遺言を見つけたあとはすぐに家庭裁判所へ行き検認も済ませたので、この遺言を使って土地の名義を変えたいのですが可能でしょうか。

 遺言の内容(抜粋):「●●町の土地は長男のAに任せる。」




 遺言で財産を特定の人に渡すには、「渡すこと」を明確に記載しなければなりません。




 この遺言の場合、「任せる」と書かれていますが、「任せる」の意味は、「@するがままにしておく。放置する。A相手のするままになる。さからわず、なされるがままでいる。ゆだねる。B他の人に代行してもらう。委任する。C下襲の裾などを後ろに流れ引くままにする。D従う」です(広辞苑より)。任せるという言葉には渡すという意味が含まれておりませんので、この遺言の文面から、お父様が土地を渡したいという意思を読み取ることが可能かどうか、ということになります。

 判例では、「遺言書の文言を形式的に判断するだけでなく、遺言者の真意を探求すべきものであり、遺言書が多数の条項からなる場合にそのうちの特定の条項を解釈するにあたつても、単に遺言書の中から当該条項のみを他から切り離して抽出しその文言を形式的に解釈するだけでは十分ではなく、遺言書の全記載との関連、遺言書作成当時の事情及び遺言者の置かれていた状況などを考慮して遺言者の真意を探求し当該条項の趣旨を確定すべきもの」(昭和58年3月18日最高裁判決)とあるので、抜粋した条項のみでは可否について判断できません。

 なお、この遺言では登記ができないという場合は、ご自宅の土地について、通常の相続手続きを行う必要があります。そのため、全相続人で誰が取得するのかを話し合っていただき、遺産分割協議書を使って名義を変更することとなります。

 このような疑義がないように、物件や承継方法等を明らかにして記載するのが良いでしょう。特に自筆証書遺言は、形式的な要件はクリアしているにも関わらず、内容に有効性がないばかりに使えない、ということが起こりうるため、遺言の作成を検討する際には、専門家に相談する、公正証書遺言での作成を検討するなど、もう一歩踏み込んで考えていただくことをおすすめします。


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